高齢者がアマゾンを利用する理由

カテゴリー: コラム / 2013 年 2月 15 日
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 先日、法事で母方の実家に行く機会があった。人口数万人の地方都市で市内にはこれといった産業もない。観光地になるような名所や自然に恵まれているわけでもなく、何ともつかみどころのない町である。
 法要が終わり会食になった。田舎のこと、こんな席には遠縁の人も加わり、見知らぬ顔も並んでいる。席を並べる者同士で談笑が始まったが、何気なく耳に入った言葉に少々驚かされた。
 70歳代後半の老人の口から「アマゾン」という言葉が出てきたのだが、周囲のこれまた同じ年格好の老人もそれに反応して、アマゾンの話題で盛り上がっているのである。

 到底、アマゾンを利用するとは思えないような老人同士の会話に違和感を覚え、隣の人に事情を聞いてみた。
 「日用品や雑貨を買いたくとも近所には売っている店がない。車で少し走れば大型店もあるが、車を運転しない老人は行くことができない。結局、アマゾンなどのネット通販を利用することになる」
 かつては駅前にそれなりの規模の商店街もあり、地元資本の中小スーパーもあったが、すでに無くなって久しいものがある。シャッター商店街を通り越して店舗自体が撤去され更地や道路になってしまっている。
 JRは朝夕の高校生の通学のためだけに走っているようなもので、昼間はほとんど便がない。かつてはバス路線もあった記憶があるのだが、「そんなもの十年以上前になくなってしまった」とのこと。自治体が中心になってコミュニティバスを一部走らせてはいるが生活の足として頼るのはかなり無理があるようだ。
 公共交通はほとんど機能していないため、自分で車を運転しなければ身動きがとれないのが実態である。
 近くに子どもがいて車に乗せてもらえる高齢者はいいが、そうでない高齢者は買い物にはタクシーを使うのが普通とのこと。結局、経費を考えればアマゾンで購入した方が安くなるというわけだ。ネット通販が普及する理由のひとつもここにある。高齢化は思わぬところにも影響を及ぼしている。(2013.2.16)


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