十年一昔、医学の進歩に驚く

カテゴリー: コラム / 2012 年 11月 27 日
Bookmark and Share

「十年一昔」という言葉があります。というよりありました。即ち2002年/2003年が一昔前と思えないほど、時間の速度が加速してきていることは誰の目にも明らかではないでしょうか。(この連載も早10年を過ぎ、ついに第250回を迎えました)
 さて、2002年の11月、中国広東省仏山市で原因不明の呼吸器感染症が流行し始め、2003年の夏ごろまでアジアを中心に世界中で大騒ぎになっていました。
 コロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群、いわゆるSARSがその騒動の原因でした。8000人余が感染して、774人が死亡したのですが。死亡者の大多数は中国南方系の人たちでした。後の研究で明らかになったのですが、HLA(組織適合性抗原—ヒト白血球抗原)のB—46を持っている人種に感染しやすく、しかも重症化して死亡する確率が高かったという、不思議な感染症だったのです。当然、バイオ・ウエポン(生物兵器)であった可能性を否定することができないものです。
 感染症とはある病原微生物がある感染経路を経て(呼吸器系—飛沫感染・飛沫核感染、消化器系、接触・粘膜感染、母子感染など)、発病する(or発病しない)のいずれかの結果の後に、発病する場合は一定の潜伏期間の後に発病するのです。
 そして発病すると、完全に治癒する・後遺症が若干残るが一応治癒する、後遺症のためにQOL(生活の質)が低下する・死亡するという流れになります。
 
 いくつかの例を挙げると、はしか(麻疹)について見ると、原因となる病原微生物は麻疹ウイルスで呼吸器系を介して感染し、その97%が10〜14日の潜伏期間を経て、発病しますが、ほぼ全員治癒します。ただし、ウイルスが脳に侵入すると、5年以上経ってからごく稀に亜急性硬化性全脳炎を発病し、知的能力の低下をもたらし、認知症のひとつの原因と考えられています。
 次に狂犬病(日本国内ではほとんど発病していないのですが)は狂犬病ウイルスがそのウイルスを持っている犬やコウモリの唾液(咬傷)を介して、感染し、速やかな対応(狂犬病ワクチン、狂犬病免疫グロブリン使用)をしなければ、平均1か月でほぼ100%発病し、発病すればほぼ全員死亡するという恐ろしい病気なのです。
 日本脳炎(ワクチン接種のトラブルで数年間にわたってワクチン接種は中断されていました)は日本脳炎ウイルスがコガタアカイエカに刺されると感染し、1〜2週間で発病することがありますが、その発病率は1%以下。すなわち、あまり発病しないのです。ただし、発病すると脳炎ですので、死亡することもある病気なのです。
 最後にエイズ—後天性免疫不全症候群について考えますと、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が性行為など血液が濃厚に接触することで感染し、数〜10年の潜伏期を経て発病すると死亡するに至るという恐ろしい病気のように聞こえますが、まず少しの注意があれば、観戦する心配はあまりなく、またもし感染しても発病までの期間を多剤併用療法で遅らせることが可能であり、発病しても悪化も遅らせることができます。結局、感染後放置しても十数年、ちゃんとした対応をすれば30〜40年の生命予後があるのです。
 
 このようにエイズかかつてのようにただただ怖い病気ではなくなってきたのも、医学の発展のおかげであり、この十年の進歩を感じざるを得ません。(2012.11.26)


(c) 社会医学環境衛生研究所 2008-